部長は、あたしの視線を受け止めてから、困惑した様に笑った。 「冴木は、面白いな」 その声が優しくて、こんなに魅力的な男の人、一生の内に出会う事なんてないと思う。 「…部長程じゃないです」 ねぇ、お願い、 あたしはグッと下唇を噛んで、部長のシャツを掴む。 今だけ、 今だけでいいから、その左手のリングを忘れて。