「…熱でもあるのか」 「なっ…!なに、」 「顔、赤いが?」 「気、気のせいです」 「そうか?」 駄目だ、泣きそう。意味分からないけど。恥ずかしくて。部長の横顔ならまだマシだけど、あたしを見る近距離の車という密室は、逃げ場がない。 端正な顔立ちは僅かに眉を上げる。 この距離で意識を保っていたあたしはえらいと思う。 「冴木、予定変更だ。このまま帰さない」 熱が、上がっていく。 その言葉の意味なんて、分からない。 どうしてこの人は、こんなにも拒めない。