「冴木、聞いてるのか?」 線の細い髪が光の反射で薄いブラウンに色を変える。眼鏡の奥に理知的な瞳。 「はい。明日までに企画書、提出します」 あたしは正しい姿勢できっちり斜め45度頭を下げる。別に、角度なんて何度だっていいんだけど。背筋さえ伸びていたらきっと綺麗に見えるから。 「よろしく」 部長は僅かに目を細めてゆったりとした口調で声をかける。 …あー、この顔が好き。 低すぎないこの声も好き。 …指に光るそのリングでさえあなたを形作る物なら何だっていい。 そう思わずにはいられない。