結局、結衣の風邪という思わぬ障害のおかげで、またもや手を出すことはできなかった。

我慢しすぎて、もはや仏の境地に達しているかもしれない。


結衣のいない教室で、はぁ…、と切ないため息を吐いた。

「銀ちゃん!もっと元気よく授業やれよ!!」

「…るせぇよ」


清川に注意されるなんて…。なんと情けないことか。

はあぁ…と再び盛大なため息を吐いた。



今日はセンター試験の解答と解説を行っている。

自由登校だった受験組も今日はほぼ揃い、久しぶりに教室が生徒で埋まっていた。センター試験が終われば再び登校してくる生徒も増えてくる。結衣も二次試験の直前までは登校するらしい。



もちろん結衣は今日休ませている。

幸い大事には至らず、熱も今朝には引いていたが念のために。おそらく試験の疲れが溜まっていたのだろう。

そういや、疲れが溜まると結衣は熱を出す。文化祭の時もそうだったっけ。


あの時も必死で我慢したな…。
……俺、変わってねえじゃん。

そんな懐かしい思い出に浸っていると、


「銀ちゃん!ボーっとすんなよ!!」


またもや清川に注意された。