マジ信じらんないと繰り返す河野さんに責められるままの鷹護さん。
珍しい光景だけど今は歓迎出来る心境ではなく…
今はお昼休み、ここは司書室…図書館の中の一室。
私を椅子に座らせ向かいの机に座る河野さんと鷹護さん。
「周さんって弓弦よりうっさいあの人っしょ?ナイわ、ナイナイ…普通、嘘でももっかい許婚になるとか何かあるっしょ?」
身振り手振りで如月さんへの拒絶反応を示す河野さんに、漸く鷹護さんが口を開く。
「嘘も形式で縛るのも嫌だ」
頑なに拒む鷹護さんに頑固者と溜め息混じりに呟いて、河野さんが私を見ながら
「そんなこと言ってる間にお嬢がお嫁に行っちゃうじゃんね?」
と困ったように眉尻を下げて見せる。
「鷹護さんにここまでしてもらったのに、私がハッキリしないから…」
申し訳ないやら情けないやらで俯いて言う私の頭をクシャッと撫でて
「そこで弓弦を利用しないお嬢だから好きなんだけどね?でもまぁ、使えるモンは使ってでも結婚しないで欲しいってのが本音かなぁ…」
とボヤく河野さんに鷹護さんが
「河野は権力を傘に着ることが嫌いだと思ったが?」
と意外そうに言った。
「うん、そうだけど?だから、周さんが力尽くなら弓弦も力で捻じ伏せて、その間に俺がお嬢と愛を育んで…」
言い掛けた河野さんの頭をパシッと叩いてバカと顔を顰めた鷹護さんだけど、その表情に固さはない。
「弓弦もお嬢も家のこと気にしずぎ!家の為に生きてんの?そんな義務感だけで務める積もりなら辞めちゃえば?」
河野さんがいつもの人懐こい笑顔でアッサリと言った。
「そうだな、俺なりのやり方で周の動きを封じてみよう。河野に借りを作るのは癪に触る」
憎まれ口を叩く鷹護さんの顔に生気が戻る。
やっぱり河野さんの笑顔はすごい。
人の心を動かす力がある。
でも私に出来ることって何だろう?
2人に気付かれないように、私はそっと溜め息を漏らした。
如月さんとの縁談は断りたいけど、パパが駆け落ちして私が跡継ぎになるしかない松本家を見捨てられない…
何より私を可愛がってくれるお爺さんを裏切ることなんて出来ないし。