恋人は専属執事様Ⅱ

私の涙をハンカチで優しく拭いながら、鷹護さんが困った顔をする。
「何度も言わせるな、俺はお前の涙に弱いんだ」
私は狡い。
お祖父さんが望むならと思ったのに、鷹護さんが引き留めてくれることが嬉しいなんて…
私は初めて人前で声を上げて泣き、その間ずっと鷹護さんは黙って胸を貸してくれた。

「1限は完全にサボりだな」
壁に凭れて胡座をかく鷹護さんの膝に乗せられた私は、鷹護さんの言葉に頷き
「私、初めて授業をサボりました…」
と少し興奮気味に話す。
鷹護さんはだろうなと相槌を打って、何でもない様子で言う。
「俺も。幼稚舎からの皆勤賞も今日までだ」
それはまたすごい記録が台無しに…と恐縮する私に鷹護さんは
「今期のトップは翔に持って行かれたかも知れない」
と笑った。
かける…って河野さんのことだよね?やっぱり河野さん、鷹護さんと僅差だし!
突然口を尖らせた私を不思議に思った鷹護さんに催促されて
「河野さんは弓弦には適わないって言っていましたよ?」
と言うと、何故か鷹護さんは照れながら
「お前の口から弓弦と言われると変な感じだ」
と言った。
散々淑乃と呼ばれた私の立場は一体?照れる隙もなかったし…