秋は嫌いだ。
冬なんて、もっと嫌い。


夏は夏で暑くて好きじゃないけれど、カラっと晴れた青空は何だか気持ちいいし。

春は花粉症に悩まされるけど、薬を飲めば平気だし。


でも、秋と冬は本当に憂鬱になる。


ただでさえ寒がりで冷え症だっていうのに、これ以上あたしを冷やさないで欲しい。

温もりが恋しくなるから。



――暖めて欲しい、なんて思ってしまうから。


傍に居ない温もりを
求めたくなってしまうじゃないか。




「やーまとっ!」

赤く色付いた葉が
ひらり、と地面に舞い落ちた。

ひゅうっと吹き付ける風と共にその黄色い声が近付いて来る。


「ねぇ、今日うち来ない?親居ないんだよねぇ。」

妙にカンに障る猫撫で声。


ぴくりといち早く、あたしの耳がその声をキャッチした。


「どーしよっかなぁ。」

…香椎くんだ。



「どうしようかな、じゃなくて来てよぉ!」

「そんな俺とシたいの?」

「大和とならいいよ?」


きゃはは、と聞こえる笑い声を背中に、あたしは小さく溜め息。


傷つく事は慣れてるはずなのに、そうゆう事は聞きたくない。

なんて、香椎くんの場合それは無茶な話だけど。