あれから
香椎くんとは話していない。


同じ教室に居ても
話すどころか、目すら合わない。

…いや、合わせないようにしてるんだ。


それはきっと、お互いに。




なのに、どこに居ても
いち早く彼の声を聞き取ってしまうあたしの耳。



彼はいつもと変わらない。

女の子に囲まれて
相変わらず、何も考えてなんかなさそうで。



あんなに傷ついたのはあたしだけなんだと、改めて思い知らされた。



そんな香椎くんを見るのが嫌で、また傷つきたくなくて

トイレに駆け込んではタバコに手を伸ばす。




バカだなぁ、と
自分でも思ってる。

だけど、そうでもしなきゃあたしはあたしでいられなくなる。



だから、性懲りもなく
同じことを続けるんだろう。


吸っては吐いて。

吐いては吸って。




そうやって
ココロの傷は麻痺してゆくんだ。



だってあたしは昔から
傷の上に傷を付けることでしか

自分を守れなかったから。