「三輪茶屋」は、町外れの神社へ続く、坂道の途中にございました。

私は、緩やかな坂道を登ってゆきます。

途中で、帽子を深々と被った御人とすれ違いました。

その方が、智春様だったのです。

智春様は、帽子のつばに手をやり、私は、膝に手をついて頭をさげました。

その瞬間、智春様の、背広のポケットから、白いハンカチがこぼれ落ちるのを見ました。

私はハンカチを拾いあげ、

「もし、ハンカチを落とされましたが」

と、坂を下っていくお背中に、声をおかけしました。