「うん……うん……」
こぎつねは頷きます。

「……だから、何も心配しなくていいんだぜ。じゃあな」

その時、まるで神様がくしゃみをしたみたいな、強い風が丘を吹き抜けました。

石はだんだん姿を砂に変えてゆき、風に運ばれていきます。

それに見とれていたこぎつねの頭から、麦藁帽子がビュンと飛んでいきました。

風を受けた麦藁帽子は、青い空の高い高い場所まで登ってゆきます。

こぎつねは、瞳に滲んでいた涙をそっと拭い、帽子を追いかけて走り出しました。


―了―