「暗い部分を見る事は容易い。しかし、輝く部分にこそ、目を向ける必要があるのではないのか」

 忘れてはならない現実もある。それに(とら)われ過ぎてはいないか。

「誰しも不幸になりたくて生きている訳ではない」

 一面だけに気を取られていて、人々の笑顔を守れるだろうか。影の部分があるのなら、輝きで影を薄くすれば良い。

「目の前の不幸の全てを、誰かのせいにしてはいないか」

 真っ直ぐに見つめてくる瞳に、トラッドは思わず視線を外した。

「君だって、みんなが幸せになる理想を抱いているだろう。僕たちは、それを実現出来ると言っているんだよ」

「それは真実か」

 何十、何百と聞かされたが、私にはそうは思えなかった。

「お前には何が見えている」

 ベリルの声がトラッドの耳にこだました。




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