あやつりの糸

「争いはなくなるんだから、全力で取り組めば僅かでも進むでしょ」

「私は多様性の排除を良しとはしていない」

 その私が何故、お前たちに賛同すると思えるのか。

「多様性は(いさか)いを生むって言ったでしょ」

 それが人類を滅ぼす一因(いちいん)なんだ。

「人間であることをやめろと言っているに等しい」

「そんなことないよ」

 多様性だけが人間の証じゃない。

「感情を持つことが──」

 トラッドはそこでハッとする。

「感情を持つことは、多様性ではないのか」

 静かに紡がれたベリルの言葉にトラッドは歯ぎしりした。

 これじゃあ、堂々巡りだ。多様性について解決しない限り、先には進めない。僕たちのなかでは、いつの間にか多様性は排除出来るものだと認識されていた。