あやつりの糸

「ベリルなら、人類を託すに値する」

 恍惚と語るハロルドにトラッドは目を細めた。

 父さんの直感なんて信じてはいないけれど、ベリルという存在は確かに凄いのだと痛感している。

「父さん」

 息子の呼びかけに顔を向けた。

「もう少し、待ってくれるかな」

「なんだと?」

 同志たちがいま、準備をしているんだぞ。

「うん、解ってる。でも、このままじゃ──」

 珍しく真剣な面持ちのその横顔にハロルドは口を引き結ぶ。

「解った。お前がそう言うなら、しばらくお前に任せよう」

「ありがとう、父さん」