これまで父の指示に従うだけだった彼らがどうしていま、こんな行動に出たのだろうか。父さんは彼らの変化に気付いていない。
仲間たちにばらつきが出始めている。無意識に焦りを感じているのかもしれない。
そのほとんどを水中で過ごし、話すこともままならない状態だというのに、彼の存在は水滴が岩に染みこむように、じわりと僕らのなかに侵入してきている。
ベリルが来て一ヶ月もしないあいだに、何年にも及び父さんが築き上げてきた結束が乱れ始めている。
やはり、彼は危険だ。
「父さん」
トラッドは繰り返される映像を視界全体で捉えながら表情を険しくした。
「これから行う方法は、大丈夫だと思う?」
神妙に問いかけてきた息子を見下ろし眉を寄せる。



