あやつりの糸

 
 ──午前十一時を過ぎたころ、トラッドはハロルドに呼ばれてモニタールームを訪れた。

「父さん、どうしたの?」

「トラッド。これを見てくれ」

 示されたディスプレイを覗き込む。

 見たところ、ベリルに向けられている監視カメラの映像だ。

「これはいつの?」

「今朝だ」

 青年とベリルの一連の会話が映し出されている。

 その映像を見つつ、トラッドはハロルドの横顔を一瞥した。その表情には、どこか誇らしげな笑みが浮かんでいる。

「どうだ。彼らは、わたしの教えを心から信じ、積極的に自らベリルを諭そうとしている」

 彼らの言動に、ベリルはきっと心を動かされるだろう。

「そうだね」

 ──これが良いことだとは、僕には思えない。