「あなただって、解っているはずです。ハロルド様の考えが素晴らしいことを」

「お前達にとっては、奴が三百という命を奪ったことも、人類のためだと言うのだろうな」

「もちろんです」

「無意味な虐殺も、必要だったと言えるのか」

 私が目的ならば殺す必要などなかった。復讐というものでさえ、彼らに向けられるものではなかった。

「大義を掲げてさえいれば、全てが正当化されるのか」

 罪を負う責は無いと言うのか。お前達には大義だとしても──

「巻き込まれた者には憎しみでしかない」

 それを受け入れる覚悟はあるのか。それとも、憎しみを持つものを悪と捉えるか。

 静かな口調のなかに、重々しい怒りが満たされている。しかし、威圧されている訳でもない。けれども青年は、ベリルの瞳に言いしれぬ不安を感じた。

「あなたは、きっと、ハロルド様に賛同します。それが人類の未来のためなのです」

 ベリルの言葉を待たずに青年は背中を向けて遠ざかった。