──メキシコから二日ほどが経ち、トラッドは戻ってきた。

 ぶっ通しで演説したのか、ベリルを除くほぼ全員が疲れた顔をしている。

 一週間以上も出たときのままのベリルは、トラッドの目から見ればあまり変化がないようにも思えた。

「父さん。ベリルの様子はどう?」

「うむ」

 短く答えたハロルドの表情は硬い。効果があるという確証が得られていないのだろう。

 これまで何人もの青年たちを変えてきたハロルドは、少しの変化でも敏感に嗅ぎ取ることが出来る。

 顔の半分が隠れているとはいえ、その変化は肌から伝わってくるはず。しかし、それがまるで感じられない。