毒を盛られた本人が他人に毒を盛るとは、随分とウィットに富んでいる。

「これは、憂さ晴らしだ」

 口の中でつぶやく。

 ベリルを捕らえるためには、生半可な技量では無理だと僕は必死に訓練を重ねた。けれど、新たに得た(ベリル)のデータに毎回、打ちひしがれた。

 追いつこうとすればするほど遠のいていく。

 どうして? そのままでも強いのに、どうしてまだ強くなろうとする。死なないのに、どうしてそんなに頑張るの。

 君の能力(ちから)は、一人を救うためじゃない。世界を救うためにあるんだ。僕が、君の進む道を示し、助けてあげる。

 ああ、そうだった。僕は、彼の右腕になりたくて、強くなろうとしたんだ。彼が望むことを行うために、強くなろうとしたんだ。