トラッドはそれをさらりと躱し体勢を崩した男のみぞおちに膝を打ち、痛みに腰を折ったその背中に肘を食らわせる。
醜い悲鳴をあげて転がる男を冷たく見下ろした。
──僕は、何をやっているんだ。初めから勝ちは見えているのにふと、この男の最後のあがきが見たいと思ってしまった。
「いや、違う」
きっとそうじゃない。
全てはベリルを捕らえるためにと、言われるがままに戦術や格闘を学んできた。それによって僕は所謂、汚い仕事を任されるようになった。
父さんの唱える理想のために、邪魔なものは排除してきた。
でもこれは、父さんがやり残した殺しだ──父さんは、傭兵たちはいつかA国の施設を誰かに話すかもしれないと、初めから殺す計画で彼らを雇った。