あやつりの糸

「そうだね」

 トラッドの抑揚のない返事に引き気味に小さな叫びをあげる。

 その声色には、お前の言葉なんか信じていないという感情がありありと示されていた。もはや、何の言い逃れも無駄なのだと愕然とする。

「懸命に隠れていたんだね。年老いても傭兵ってことかな」

 それに、いまの仕事は報酬もいいよね。

「麻薬密輸の護衛だもの」

 見返りはかなりのものだろうね。

 ──メキシコは主要な麻薬の生産国、中継国だ。ヘロインの生産量は少なくとも、外国製麻薬の半数以上はメキシコカルテルの支配下にある。

「あ、ああ。そうだ、これまでの金を──」

「全部あげるから見逃せって?」

 魅力的な申し出だけど残念、君が持っている秘密とじゃあ、釣り合わない。