──三時間ほど経過してトラッドが部屋に戻ってくる。

「あー……」

 入ってすぐ、三人目が語っている後ろ姿を眺めて頭をかいた。

 アイシャは比較的、上手く語る。しかし、サムはまだ演説になれていない。戻ってきて数分で三回も噛んでいるのを見ると呆れてしまう。

 そりゃあ、経験を重ねることが大事だけど、ベリルを相手にさせるには無謀だよ。僅かな違和感は洗脳を阻む要因だ。

 折角、進んでいても後退する。進むよりも多く後退するかもしれない。

「サム。よく頑張ったね。いい経験になっただろう。次はミシェル、君に任せるよ」

「はい」

 若々しい褐色の肌が青年の快活さを表しているミシェルと呼ばれた男性は、サムからヘッドセットを受け取るとさっそく語り始めた。