「私はアイシャ。ハロルド様の同志です」

 トラッドはそれに肩をすくめた。

 そりゃあ、そうだよね。父さんの意見に反対の人が話しかける訳がないじゃないか。あえて言う事でベリルの孤立感を煽っているんだろうけど、効果があるとは思えない。

 父さんも、みんなも、この数時間でベリルは精神的に疲れていると思っている。同じことを延々と聞かされているのだから、そう考えるも当然だろう。

 けれど、相手が誰であるかを忘れているんじゃないだろうか。

 結局のところ、彼については僕任せで誰もベリルという人物について詳しく知ろうとはしていない。

 トラッドはそれに少しの苛立ちを覚え、青年たちを一瞥してまわると部屋をあとにする。