──アメリカ合衆国、テキサス州──合衆国本土の南部にあり、メキシコとの国境に接している。

 メキシコの国境から続く山脈のビッグ・ベンド国立公園の付近に、人目を避けるように無骨な建物があった。

 さして大きくもないその頑丈な建造物は壁も厚く、人の気配は外からではまるで感じられない、廃墟のような静けさをまとっていた。

 建物内はとても質素で生活感はまるでない。

 グレーの壁紙が貼られているだけの部屋が三つほどと一番大きな部屋に冷蔵庫が一つ、他はいずれもテーブル、クローゼットが置かれているだけだ。

 しかし、ここに数分も静かにしていれば妙な違和感に気がつく者もいるだろう。しかし、その違和感の正体にたどり着ける者はいない。

 一見すると、公園職員の休憩所に見えるこの建造物には地下がある。