「さあ、始めよう」

 適応したベリルを確認し、ハロルドは再びヘッドセットを装着して演説を開始する。

 トラッドは、目隠しをされ手足を拘束されて水中を揺らめくベリルの姿を眺めながら、薄ぼんやりとハロルドの声を聞いていた。

 父さんの言っている事は間違いじゃないはずだ。君は、それが解っているんだろう。なのに、何を今さら父に反発しているんだ。

 これは拷問そのものだ。酷い仕打ちを繰り返し、精神的にも肉体的にも疲弊(ひへい)させる。そうすることで、相手の話に耳を傾けるようになる。

 その言葉が全てだと錯覚(さっかく)する。

 洗脳の方法を理解していれば効果が無いと思うかもしれない。しかし実際に味わうと、人は面白いほど簡単に洗脳される。

 でも、果たしてそれが(ベリル)に通用するのだろうか。