あのとき、彼の死を確認しておきながら、本当は生きていて、迎えには来ないだろうかと考えた事は確かだ。
しかし、待っても無駄な事は解っていた。それでも、ひと握りの希望を僅かでも持ちたかったのかもしれない。
このまま動かなければ、来るのは軍の人間だ。
自由というものに、多少の憧れはあった。しかし同時に、恐怖や不安も感じていた。決められた一日を繰り返していた私に、自由は手に余るものにはならないだろうか──
「それでも、自由を求めたんだね」
無言のままのベリルにつぶやいた。
「そんな君だからこそ、人類を導く者になれるんだよ」
「統合すると言うことは、多様性の排除を必要とする」
話に乗ってきたとトラッドは子どものような笑みを浮かべた。
「多様性があるから争いが生まれるんじゃないか」
人と違うことが良いなんて、それは幻想だよ。多様性で人は殺し合う。