その夜──トラッドはベリルの元を訪れた。

「父さんが声を(あら)らげるなんて、初めて見たよ」

 ベリルはそれに、あの程度でかと眉を寄せる。

「そのおかげで、ますます君にご執心(しゅうしん)だ」

 肩をすくめたトラッドに、ベリルは眉間のしわを深くした。

「君が賛同すれば、実行するのは容易い」

「随分と自信がある」

「僕たちが計画を立てる必要がないからさ」

 君がその気になりさえすれば、君自身が計画を立てるからね。

「ここにきて人任せとは呆れる」

「あ、そういう言い方する?」

 意地悪だなあとケラケラ笑う。

「だって、状勢は常に変化しているでしょ?」

 だからさ、いま計画しても意味がない。

「まあ骨組みくらいはあるけどね」

 君だって、それくらいだと解ってるくせに。

 トラッドはそれから、目の高さを合わせるようにベリルと同じく腰を落した。