これは、誰でも不安になる部分だ。データにも残しているけれど、昔からの宗教を見れば解るように、それがそのまま伝えられる確信など無い。

 カリスマ性のある人間に語らせれば、長い年月のあいだに磨かれた思想など簡単に覆るだろう。なんとも痛いところを突いてくる。

 人間の思想なんて、その程度のものなのかもしれないけど。

「君は何十年と閉じこめられても、考えは変わらないと言い切れるのか」

 ベリルはそれに、

「やってみてはどうか」

 他人事(ひとごと)のように薄笑いを浮かべた。

 その笑みに、そこにいた全員が身を震わせ、ハロルドはますます確信を高めた。

「トラッド」

「なに?」

「明日、再び容器を水で満たす」

「解りました」

 準備をするようにと青年たちに言い残し、ハロルドは部屋を後にする。