「逃がしてしまったことに酷く落胆していた」

 だけど、今は逃げてくれたことに感謝している。

「こうして、君は不死を手に入れた」

 まさに導く者になる運命なのだと、父さんは震えたそうだよ。

「勘違いも(はなは)だしい」

「でも、正しいと思うけどね」

 その言葉にベリルは怪訝な表情を浮かべる。

「だって、君は人類という種のDNAの集合体だ。ある意味、神が使わした者だと僕は思うね」

 君は無から生まれた訳じゃない。

「さすがに、そこまでの力はアルカヴァリュシア・ルセタにも、今の人類にもない」

 集められた、あらゆる人種のDNAを基にして造られた。

 君だけが、成功したんだ。そうなれば、宗教的な一面を持ち合わせたとしても何ら不思議はない。

「人類を導く者として、最も相応しいじゃないか」

 君の言葉は人々の心を動かし、救世主となる。

「担ぎ上げる相手を間違えている」

 ベリルはハロルドとは違った狂気をトラッドから感じていた──




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