「一つの種が生き続けていく年数はだいたい決まっている。人類も例外じゃあない」

 種の終わりは必然だ。終わりに近づいた種がどうなるのか、誰にも解らない。

「だから独裁者が必要だというのか」

「あれ? 父さんが言う導く者は独裁者だと考えているの? まあ間違ってないけど。別に独裁自体が悪い訳じゃあない。やり方が重要なんだ」

 それも君なら充分、解っているよね。

「生きている環境により思想や性質は異なる。それを、一人の人間が支配出来ると思うのか」

「初めは無理だろうね。でも、数十年のあいだ環境を統合することに専念したら、どうだろう?」

 未来の世界を担うのは若者だ。エネルギーに溢れた若者たちの環境を統一させれば可能だと父さんは言っていたよね。

 父さんはずっと、指導者としての風格とカリスマ性を持つ人間を探していた。そして、君に会って直感した。

「けれど、環境を統合する。その仕事だけで君の寿命は終わってしまう」

 その問題について父さんはいつも悩んでいた。捕まえられなかった期間、君を説き伏せることが出来ないしね。