「No,6666(フォーシクス)

 瞬く間に世界が反転する。

 立ち上がり、無表情ながらも自分を見下ろすベリルに青年は口元を歪めて続けた。

「そろそろ父さんが、あなたを迎えに行けってさ。だから来た」

「なんの話だ」

「解っていても、そう言うしかないよね」

 薄く笑い、微かに震えているベリルの手を見やる。

「死んだと思っていた? でも、実は違うんだ」

 それにようやく、ベリルは確信した。しかし、はったりの可能性もある。なにより、認める訳にはいかない。

「人違いだ」

 日頃ベリルと接している者ならば、これほど冷めたあしらいをするのは珍しいと思うだろう。外見から冷たく見えるベリルだが、実際は柔らかな物腰で友人も多い。

 青年は遠ざかるベリルの後ろ姿を追うように腰を上げる。