あやつりの糸

「という訳で。水を抜いてくれるかな」

 青年は言われた通り、排水のスイッチを押した。

 すると、それまで流れの無かった水槽内に下に向かう流れが作られる。満たされていた真水が徐々に減り始め、しばらくするとベリルは体の重さを感じるまでになった。

 そうして水が膝あたりにまで減ったころ、一日ぶりに感じた重力に片膝をつく。

「ガハッ」

 肺の中に溜まっていた水を吐き出し長い間、水中にいた体は新しく与えられた環境に適応していく。

「水の中の気分はどうだった?」

 トラッドは咳き込むベリルに笑って尋ねた。

「良いと思うか」

 口元をぐいと拭って言い捨てる。

「父さんの声を聞き続けながらだもんねえ」

 言いもって手で合図をすると、水槽の天井から風が吹き込まれた。

「濡れたままじゃあ、風邪を引く(・・・・・)からね」