あやつりの糸

 
 ──数時間後、トラッドが戻ると演説はまだ続けられていた。

「あーあ」

 父さん、声がしわがれているよ。

「そろそろ休憩にしない?」

 息子の言葉にハロルドは演説を切ってベリルを見やる。すると、ようやく終わったかとうんざりし、水槽内を優雅に泳ぎ始めた。

「あとは頼む」

 トラッドは部屋から出て行くハロルドの疲れた背中を一目(いちもく)し、泳ぐベリルを眺める。彼の様子を見る限り、効果はあまり期待出来そうにない。

「イルカみたい」

 息継ぎを気にしなくて良いから泳ぎ放題だね。

 彼は幼少に専門家から泳ぎを学んでいるためか、とても綺麗な泳ぎをする。身体能力の高さも相まって、本当に人魚なんじゃないかと思えるくらいだ。

「また明日、父さんの演説を聴いてもらうね」

 唇をゆっくりと動かすとベリルはこれでもかと眉を寄せた。