「まさか」

 あれだけの怒りを見せたというのに、一夜にして綺麗さっぱりなかったことにしたというのか。

 驚きつつも、座ったまま無表情に自分を見つめるベリルにトラッドの言葉は間違いないと認めた。

 なんという立ち直りの早さだ。

 だからといって、ここから出られる訳ではない。君だけが、わたしの理想とする世界を実現することが出来るのだから逃がしはしない。

 そのためには──

「ただ話しただけでは、君には伝わらないようだ」

 あの頃とは違う方法を試そうじゃないか。

 言って機械の前にいる青年に手を挙げて合図をすると、ゴボゴボと天井にあるパイプから透明の液体が降り注がれる。

「それは真水だ。君は何度かこの実験を受けているね」

 そんな事まで知っているのかとベリルは呆れつつ、満たされていく水に顔をしかめた。




†††