「誰だ」

 記憶にない。

「あれ。解らない? 僕は父によく似ているんだけど」

「父?」

 言われて青年の顔を眺める。

 目元には見覚えがあるかもしれない。だが、どこで──?

 いぶかしげにしていると青年が何かを含んだ笑みを浮かべた。その瞬間、ベリルの心臓が大きく鼓動した。

「──っ!」

 胸の奥底から湧き上がる嫌悪感に手が震える。

 これは一体、なんだ?

「少し、思い出したみたいだね」

 そう言ったあと、青年は腰を浮かしベリルの耳元にささやいた。