ベリルにしてみれば、施設にあったものが世界の全てだった。箱庭だと言われればそうだろう。

 それでも、そこには愛があった。もし、虐げられていたならば、外に出たいと切望していたかもしれない。

 ブルーは軍人であったにもかかわらず、(まと)う雰囲気に刺々しさはなかった。けれども、多くの死と血を見続けた者が持つ独特の存在感がにじみ出ていた。

 戦闘では常に最善を尽くせと教えられた。実際に闘うことなど、なかったはずの訓練だった。

 どれほど記憶しても、その知識は高い壁から外に出る事はない。それでも学びは楽しく、ブルーとの訓練には力がこもった。

 私はそれで終わる運命だと、割り切っていた。本来ならば割り切れるはずもないことだろう。なのに、私はおぼろげにでも、それに納得していた。

「──っ」

 強く目を閉じる。

 全てを奪った者を前にして怒りを収められなかった。復讐の相手など見つけられないと諦めていたが、唐突に現れたことで気が(はや)った。