「だがそれも、偶然の成功でしかなかったようだ」

 しかも、成功したとされるのは一体のみで、あとは精神が破綻している失敗作と判断された。その証拠に、不死の研究にと君を捕らえクローンを試みた組織は一体も成功していない。

「当然だ。君の細胞からクローン胚は作成不可能なのだから」

 なのに、どうしてあの施設で秘密裏に実行されていたクローン作成が出来ていたのか不思議でならない。

「これは仮説としてだが、クローンを試みるにあたり、採取した君の細胞はそのとき、まだ不安定であったのかもしれない」

 年を追うごとに細胞は安定し、君が十歳になる頃には細胞の増殖すら成功しなくなっていた。現に、手に入れた情報によると、クローンの失敗数と君の成長は比例している。

「もちろん、これは君もすでに推測していることだろうね」

「情報を得たなら、研究所がどうなったのか知っているだろう」

 ようやく口を開いたベリルにハロルドは何かを含んだ視線を送る。

「ああ、知っているとも。情報を得なくともね(・・・・・・・・・)

 その言葉にベリルは目を眇め、ハロルドの不気味な笑みから瞬時にそれを読み取った。