「足りないものは君だけだった」

「お前の理想に私を巻き込むな」

「何を言う。わたしの理想には、君が不可欠なのだ」

 そのために君にはわたしの思考と、それに足る口気(こうき)を仕込んだ。

「お前のつまらない話にはうんざりしていた」

 冷ややかな視線を送るベリルにハロルドはますます熱を持つ。

「理解していたという事だな。私が見込んだだけのことはある」

 君にわたしの教えを語ったのは二歳頃からであったか。それから九歳までのあいだ、君は実に優秀だった。

「お前のためではない」

「不死となって、世界はどうかね?」

「お前が喜ぶような意見はない」

 抑揚のない返しにもハロルドは笑顔のまま、ゆっくりとさらに口を開く。