「とうとう手に入れた」

 老人は壁越しに横たわるベリルを見下ろし、勝利に拳を握りしめて独り言を繰り返している。

「いつ目を覚ます」

「もうしばらく。数十分くらいかと」

「そうか、そうか」

 答えたトラッドには目も向けず、ひたすらベリルを眺めた。それをトラッドは無言で見つめる。

 幼少の頃から父は何かを隠していると感じていた。それを知らされたのは十二歳のときだったろうか。

 それまで父は持論を唱え続け、息子の僕がそれに心から賛同したと確認したあとに、隠してきた真実を話した。

 そんな事がと驚いたものだが、少しも疑わなかったのかと言われれば嘘になる。でも、ベリルが本当に存在すると解ったとき、僕は父さんを信じた。

 しかし、彼を調べれば調べるほど、父さんが考えている計画が実現するのか不安になっていった。

 それほどに、ベリルという人物は精神的にも強い。