あやつりの糸

「トラッド!」

「だめだよ。僕は、君の秘密を知りすぎた」

 中に入れと示すベリルの目に、例外はないと笑って拒んだ。

「よせ!」

 ベリルの制止も聞かずガスマスクを外す。

「やっぱり最後は、君をちゃんと見ていたい」

 痙攣を始めたハロルドたちを確認して、腰の後ろに手を回し取り出したハンドガンの銃口を自らのこめかみに突きつける。

「馬鹿な」

 私に不利になるものを集め、見極めろとでも言うように目の前で破壊するのか。

 そんなことは認めない。あまりにも身勝手だ。

「愛しているよ」

 誰よりも君を愛している。

 見せた笑みがあまりに清々しく、ベリルの脳裏に強烈に焼き付いた。

 トラッドはベリルの表情に満足したのか迷うことなく引鉄(ひきがね)を絞り、血しぶきを上げて銃弾がこめかみに沈んだ。

「トラッド!」

 倒れ行くトラッドの姿は爆発で見えなくなった。