「本当は誰一人、愛してなんか、いないくせに」

 そんな人が、どうして人類を救うだなんて大それた理想を掲げたの?

「何を言っている」

 共に理想を実現しようと誓っただろう。

 今になって、どうしてお前がそんな事を言う。

「ベリルにはね、大切な家族がいたんだ。それを、父さんが全部、奪った」

 父さんはそれに謝ることもなく、自分の思考だけをベリルに押しつけた。

「彼に、そんな人間らしい感情なんて、ないと思っているんでしょう?」

 それを見たとき、父さんはとても残念がったものね。

 でも、ずっとベリルを見てきた僕からは、当然の感情だと思ったよ。彼はあまり表情には出さないけど、本当は感情豊かなんだ。

「僕の人生はベリルだけを見てきた。ベリルが僕の全てだった」

 その言葉にハロルドはハッとする。

 人類のためにその身を捧げ、ベリルのために生きるのだと教えた。幼少の頃から何度も、何度も刷り込みをした。