「僕は、解ったんだよ」

「何がだ」

 ハロルドは手の震えを抑え、か細く聞き返した。

「ベリルを捕まえて、これでもう大丈夫と思いながらも、ずっと心の奥底で聞こえていた声の主」

 あれは、僕だったんだ──無駄だと繰り返し聞こえた心の声は、僕の声だったんだ。

「そうだよ。無駄なんだ。彼を洗脳しようなんて」

「トラッド、何を言うんだ」

 人類の未来のためには、ベリルを指導者にしなくてはならない。世界をまとめ、導いてもらわねば人類は滅びてしまう。

「僕は、ずっと父さんの傍にいたけど、どうしてだろう。父さんに愛されたと感じたことが一度もないんだ」

 ひたすら言われたことに従い、それが正しいことだと信じていた。

 それは、愛されているからだと、信じていた。