「君が教祖なら、その宗教はきっと上手くいく」

 唐突なトラッドの話にベリルは目を丸くしながら赤ワインを傾けた。

 ワインに合う料理が乗せられた皿を見下ろし、トラッドの行動に眉を寄せる。奴は何がしたいのか。

「これまで最高、何人の傭兵を指揮したの?」

 顔をしかめたまま答えないベリルとしばらく目を合わせる。

「僕の知る限りでは、百人だっけ。正確には百二十二人」

 知っているなら何故、訊いたとベリルの眉間のしわが深くなる。そんな様子にトラッドは声を上げて笑った。

「君がここに来てから、どれくらい経ったかな」

 まったく変化がなくて、こっちはがっかりだよ。

 ベリルはそれに薄く笑う。従えないものには抗うしかない。ハロルドがやろうとしている事は、見えない虐殺だ。