エレベーターの隙間から垣間見えた、ナギの表情。
――まるで謝りたいような、沈んだような。
悲しみに彩られた瞳をしてた。
その後も隠し事をしたままで。
ナギはあの時、あたしのお父さんの運命をもう知ってたんだ。
何もかも解っていて、あたしを守ろうと、別れを受け入れて黙って去った。
あたしを傷つけないために何も知らさず、弁解もせずに。
あたしは全てを理解した刹那……。
今までにない大粒の涙が頬を伝った。
「君は、私への罪悪感から、凪に別れを告げたろう?
私は、そんな事を望んではいなかった。
私が君を庇ったのは、恋しいから生きていて欲しいと願ったと同時に、君らしく生きていて欲しいと思ったからだよ。
なのに、私のそばにいる君は抜け殻だった。
私は見るに耐えなかった。そんな時に私の話を辛抱強く訊いてくれたのが、担当看護士の高瀬さんだったんだよ。
彼女はずっと私を支えてくれた。
彼女となら、これからもずっと歩いてゆけると思う。
だから、杏子。
君は君に相応しいパートナーと共に歩いて」



