オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

「おばあちゃんの犬はどうして死んじゃったの?」


飛行機の玩具をいじりながら、博君がそう訊いたら。


初めて、静江おばあちゃんの手が止まって、表情が少し曇った。


軽い緊張感を伴って、あたしたちが息をのんで待ってるのが判ったんだろな。
静江おばあちゃんは大きく息をつくと、長い長い沈黙の後にぼそりと呟いた。


「殺されたんじゃよ」


「えっ……殺された?」


あたしが思わず聞き返すと、静江おばあちゃんはあたしたちから視線を外して窓の外―古ぼけたて傷んだ犬小屋―に目を向けて、絞り出すような声で話す。


「あれは25年前……当時、この近所にもたくさん犬や猫を飼ってた家はあった。
……だけどな。
夏くらいからだったかの。
元気だった筈の犬や猫が突然に死に始めたのは」


「突然死?病気かなにかで?」


「昨日まで元気で健康そのものだった若いペットが、3匹くらいまでなら急に死んでもなんかの偶然が重なって、ってみんな思うわさ。
だけど、突然死は広がっていき、10匹を越えると流石にみんな不審に思った」