赤石さんは高瀬さんに車椅子を押してもらったまま、戸籍課の列に並んでた。
それにしても、高瀬さんは妙にうきうきしてるなあ?
すごく楽しそうだし、良いことでもあったのかな?
まさか、あたしと赤石さんの入籍がそんなに嬉しいわけないよね?
お母さんにジュースを買ってきてもらったあたしは、ベンチの背もたれに寄りかかりながら吐き気に耐えてた。
赤石さんの番になり、彼は婚姻届と戸籍抄本と住民票が入った封筒を取り出した。
高瀬さんの介助を受けながら、たどたどしい手つきで受け付けに提出する。
受け付けの人は馴れた様子で不備がないかチェックしてる。
「はい、確かに受理いたしました。おめでとうございます……」
受け付けの人がそう言った瞬間、あたしの胸には安堵感や嬉しさよりも、言い知れない虚しさと悲しみと惜別が広がった。
これで、あたしはもう渚杏子じゃなくなるんだ。
他の人には嬉しいはずの入籍が、あたしにはこんなにも苦しくて辛いなんて。
だけど、次に係りの人が出した言葉に、あたしは耳を疑った。



