だけど、どうしようかとあたしは迷う。
明らかに赤石さんの子どもじゃないのに、のこのこと赤ちゃんが出来たなんて言えない。
彼とはキス以上の事はしてないし、あたしがずっと勝手に付き添っているだけで、もちろん恋人関係なんかじゃない。
彼も何度となくあたしに問おうとした気配は見せたけれど、あたしはその度に逃げてきた。
“どうしてここにいるのか?”
それを訊かれたら、きっとあたしの自己満足で欺瞞な理由を見抜かれてしまう。
貴方のためにナギとも別れた……だなんて。
絶対に言いたくない。
その一方で、赤石さんとあたしの奇妙さに気付く医療スタッフはおらず、相変わらず恋人関係にあると誤解されたままなのも、都合はいいけど辛かった。
あたしのそばで歩いてる高瀬さんもそうなんだろうな。
「渚さん、着いたわよ」
チラ見しようとした刹那、高瀬さんの口が開いて、緊張が一気に高まった。
高瀬さんが軽くノックすると、「どうぞ」という赤石さんの声が聴こえた。