「おまえが知る必要はない」
ナギはエレベーターに乗り込むと、そう言ったまま口を噤んだ。
「何よそれ?あたしは臨時でもあんたの秘書でしょう!?秘書なら把握しておかないと。
それに……言ったでしょ。あたしはナギのことを知りたいし、理解したいって」
「余計なことに気を回さなくていい。おまえはただ俺の言うとおりに動けばいいだけだ」
ナギはあたしを見ようともせず、ひどく突き放した言い方をした。
まただ……。
またこの人は、何かを隠してる。
あたしには判る。
あたしはナギのジャケットの袖口をぎゅっと掴んだ。
「ナギ、何か隠してる」
「隠してなどいない」
「嘘だよ!じゃあなんで、瞬きがいつもより速いの?
無意識のうちに手を組んでるのも、隠し事してる時のクセだよ!
あたしには隠し事なんかしないで!
あたしは……」
あたしの声は全て出せなかった。
ナギがあたしの唇を、自分のそれで強く塞いだから。
あたしの体は彼に壁に挟まれ、手首も壁に押し付けられて動けない。



