お父さんは眼鏡の奥の瞳から涙を流し、床に着いた両手と肩を震わせてさえいた。
「今更許してほしい、などと虫のいいことは言わない。
だが、おまえが正真正銘私の娘だと知った時、私はおまえと美子をまだ愛していたのだと実感したのだ。
思いこみだけであのような仕打ちをした情けない私に、おまえたちの前に姿を見せる資格がないのは解っている。
だが……どうしても謝りたかった。
そして、出来れば美子とおまえと私の3人で、月に一度で良いから逢いたい。
今までの時間を取り戻したい。
償いにすらならないかもしれんが、私に出来ることなら何でもするつもりだ」
お父さんが、初めて話してくれた真実。
その誠実さは、あたしが纏う硬い殻を一つずつ剥がしてゆく。
確かに、あたしはお父さんを許せないと思っていた。
大好きだからこそ、憎しみに近い感情すら抱いていたのは事実で。
お母さんをあんなに不幸にし、あたしという存在を否定したお父さんを、あたしは大好きと同じ位に大嫌いだった。
相反する感情を併せ持つ矛盾を抱えてた。



