お父さんがどうして急にそんな話をしたのかわからないけど、少なくとも今はあたしの存在を認めてくれたから聴かせてくれているんだと思う。
「私はおまえ愛おしみ、可愛がったよ。
だが……おまえが6ヶ月を過ぎた時、薄かった黒目が少しずつ青みがかってきたと判った時。
私は、全てから裏切られたような絶望感に襲われた。
可愛い自分の分身だったおまえは、よそよそしい他人と化し、愛する妻はよその男と交わってその子を私の子と偽り抱かせたのかと。
全てが仮初めの毎日だったのかと。
そして、全てが疎ましくなっていった。
私は若すぎた為に、調べもせずそう思い込んでしまった。
私がお前たちに辛く当たったのは、裏切られた思いこみからくる失望もあったが、その反面で自分の不甲斐なさに対する苛立ちや情けなさもあったのだよ。
いわゆる八つ当たりだった。
本当に最低な父親で夫だったよ。
自分の醜い面が次々と出てきて、どうしようもなくなり、逃げるように酒に溺れていった。
そんな時だ、飲み屋の女を妊娠させてしまったのは」



