オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

「ありがとうね、ナギ」

あたしは一応お礼を言ってから、遠慮なく使わせてもらった。

チューブから出たのは乳白色で、触っただけでひんやりと冷たい。

ちょっと塗ってみただけで、あっという間に痒みが引いたのは驚いたぁ。

ずいぶん効くから、市販薬なら買い置きしておこう、と思ったけど。


チューブには薬品名はおろか、製造元や販売業者を示すラベルが一切なかった。


……あ、怪しい。

怪しすぎる。


あれ?だけどなんでナギがアレルギー性皮膚炎用の塗り薬なんか持ってるの?


あたしが使おうとしたら、もう口は開いてたから、やっぱりナギが使った後って事だよね。


ナギもアレルギーがあったんだ。


意外な共通点を発見して、あたしは笑いを堪えるのに苦労しちゃった。

だって、あのナギが痒みに耐えながら薬を塗ってる姿を想像しただけで、あたしは可笑しくて。


「笑ってる暇があるならとっとと今日の書類をまとめろ」


そんなナギのイヤミも、どこかムッとしてすねたような、人間らしい感情が含まれてたような気がした。